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2026.07.30

2025(昨年)夏

昨年の夏の話、1年以上経ってしまいましたが、書き損じないうちに残しておこうと思います。

 

baronをオープンして9年。

 

初期の頃から、お客様によく言われていたことがあります。

 

「海外でもいろいろなものを食べた方がいい。」

 

私自身もずっと行きたいと思い続けていましたが、店を続ける中でなかなか時間を作れず、気がつけば5年。さらにウイルス騒動もあり、ようやく7年越しでフランスへ行くことができました。

 

もっと若い頃、社会人になってすぐはホテルの西洋料理の調理師をしていました。海外で働くためにお金も貯めていましたが、さまざまな事情があり、自分自身を見つめ直すことになり、その計画も頓挫しました。

 

その後は街に出て、飲食やサービス、店舗運営や会社の仕事など、いろいろな経験を重ねるうちに、海外へ行くタイミングを完全に逃してしまっていました。

 

フランス料理をしていたのに、一度もフランスで食べたことがない。

 

そんな状態のまま、お客様からの後押しもあり、もともと興味の深かったワインを現地で味わうために旅に出ました。

 

パリ、シャンパーニュ、ブルゴーニュ、リヨン。

 

食もワインも存分に感じることができました。

 

ただ、それでもまだ海外を味わいきれていないという感覚が残りました。

 

翌年はパリ一予約が取れないプレニチュードのソムリエがbaronに食事に来てくれたのも有り、再びパリそしてボルドー、スペインへ。

 

バルセロナ、レオン、ブルゴス、ゲタリア、オンダリビア、サン・セバスチャン、ビルバオ……。

 

特にボルドーからスペインへ移動する際、夏休みでTGVのチケットがすべて完売しており、急遽スペインの田舎のレオン空港に飛ぶことになりました。到着してみると現地の人はほとんど英語が通じず、私もスペイン語はほぼ分からない。タクシーは電話でしか呼べず、さらに夏休みでバスもほとんど取れない状況で、移動手段が限られた中での旅は想像以上に過酷でしたが、とにかくとにかく鍛えられました。

 

各地を食べ歩き、多くのワインの造り手やシェフたちと話をした時間は、今でも鮮明に覚えています。

 

細かくは書きませんが、スペイン・レオンで世界最高と名高いステーキ店に触れたことは、とても大きな経験でした。

 

日本の一般的なステーキとの違いは以前から理解していたつもりでしたが、実際に現地で体験してみると、見えてくるものがまったく違いました。

 

お客様の声をきっかけに海外にも目を向けるようになりましたが、その旅で改めて感じたのは、自分が今扱わせてもらっている神戸ビーフの価値でした。

 

神戸ビーフの中でも100頭に1頭クラスと言えるような牛を仕入れ、それを理解し、支持してくださるお客様がいるということ。

 

これまで世界的な視点などほとんど持っていませんでしたが、自分は本当に恵まれた環境で、相当良い仕事をさせてもらっているのだと実感しました。

 

そして、それを継続できているのは、今も変わらず通い続けてくださるお客様のおかげなのだということも、改めて強く感じました。

 

どの店にも、それぞれ称賛されるべきものがありました。

 

誰が一番かという話ではなく、それぞれが何を提供し、何を表現しようとしているのか。

 

その姿勢に触れ、自分の立ち位置や、自分ならどう表現するのかということをたくさん持ち帰ることができました。

 

それが次につながるのだと思います。

 

正直、自分のやっていることにここまで誇りを持てるようになるとは思っていませんでした。

 

控えめでいたいと思っていた自分には少し似合わない感覚でしたが、この旅を経て、やるべきことは明確で、もう振り返る必要はない、前に進んでいいのだという自負を得ることができました。

 

書くのがずいぶん遅くなってしまいましたが、あの旅で出会った 世界のステーキシェフたち、ワインのスペシャリストたち、そして背中を押してくださったお客様に、今も感謝しています。

 

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